杜子春
2010年 10月 07日
もともとオーナー夫婦自身のバックパック体験に基づいて、旅人に理想のゲストハウスを目指して経営されているだけあって、宿泊客の便利をよく考えた素敵な宿だった。
リモコンの「指定位置」件「説明書き」もこんな。隅々まで細かな気遣いは中国にあるゲストハウスとは思えないほど。
成都に来たからにはこれははずせないという気分で、晩飯は陳麻婆豆腐店へ、ゲストハウスから大通り沿いを歩いた。僕は中国の大都会を歩いた経験がなかったので驚いたけど、通りでは誰も自転車を漕いでない、どのモーターバイクにもエンジンがない、すべて電動だった。大気汚染の観点からはとてもいいことだと思うけど、電動バイクも電動自転車も、全く音を立てずにかなりのスピードで歩行者の横を走り抜けるので、注意してないと轢かれそう、とても危険な状態とも言える。
長めの散歩の末にたどり着いた陳麻婆豆腐店。四川料理特有の山椒がめちゃ利いたきつい味かと想像してたらそんなことはなく、何ともいえないコクのあるおいしい料理だった。
なんと言っても白いご飯にぴったり! ビールは雪花啤酒。
シムズはゲストハウスの受付がトラベルカウンターになっていて、四川省やチベットへの旅行を手配してくれる。お勧め旅行案内の中に、成都の南西160kmにある峨眉山があった。峨眉山と言えば、「或春の日暮です。唐の都洛陽(らくやう)の西の門の下に、ぼんやり空を仰いでゐる、一人の若者がありました」で始まる芥川龍之介の短編「杜子春」の中で、主人公が仙人に連れて行かれる山。
懐かしいなあ、でも話の詳細は忘れてるなってなわけで、シムズのネットコーナーで改めて「杜子春」を読み返した。芥川龍之介は大正7年に「蜘蛛の糸」を、2年後に「杜子春」を、同じ「赤い鳥」に発表したけど、「杜子春」は「蜘蛛の糸」と違ってハッピーエンド、いい話やね。
このときトランジットで成都を通過しただけだけど、「杜子春」に今更ながら感動し、これは四川省をめぐる旅を実現しないと、という気分になった。