黄金寺院と国境の応援合戦

土曜日の午前中アムリツァルの空港に着いた。パンジャブを訪れるのはこれが初めて。
「パンチ(5つの)アブ(水)」を語源とするパンジャブは、インダス河の5つの支流が潤す豊かな穀倉地帯だが、分離独立による紛争と殺戮の悲劇的な歴史を抱えていて、分離に際して対立が抑えられたベンガルと全く対照的である。分離した西の方、パキスタンのパンジャブ州は州都ラホールを擁してパキスタン人口の大半を抱える大きな州だが、こちら側のパンジャブ州は後にハリヤナ州が独立してさらに小さくなり、チャンディガル連邦直轄領をハリヤナと州都として共有する変わったかたちを取っている。

宿は旧市街の中心、シク教総本山のハリマンディル・サヒブのすぐ南側に取った。
空港から宿に着いて、まだ正午前だったんで部屋の掃除が終わるのをロビーのぼろぼろのソファで待っていたら、日本人男性が入ってきて隣に座った。たぶん同じフライトだったんだろう。聞いてみるとデリーで商社にお勤めとのこと。今日はパキスタン国境に出掛けますかという話になり、宿を出てすぐの寺院南口で15時発国境行きミニバンを一緒に予約した。アムリツァルから30kmほど行った国境で、夕刻の印パ両軍による国旗降納セレモニーを見学するツアーが人気なのだ。印度側国境の町の名がアタリで、パキスタン側国境の町の名がワダなのだが、運転手たちはワダボーダーと呼んでいた。往復ひとり120ルピー、安いね。ふたりで100ルピーを先払いして商社マンとは一旦別れた。

そのままひとりでハリマンディル・サヒブに足を踏み入れてみた。まずは入り口で靴を脱いで裸足になる。
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ゲートで、槍を持ったガードに突かれる。ことは幸いになかったが、帽子では入れないと指摘され、被っていた帽子を取って代わりにショールを頭に巻いた。
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ほお、聞いてたとおりの美しさ!
アムリツァルという街の名はこの聖池アムリタサラスに由来するそうだ。信者の一部が沐浴したり、手で水をすくって額に当てたりしている。寺院では人混み押されるかと覚悟していたけど、さすがシク教徒、荘厳な雰囲気を保つ節度を感じる。

去年印度人ふたりを金閣寺に連れて行ったとき、「ああ、木造かあ」というのが彼らの漏らした感想だったけど、ゴールデンテンプルの名から想像する建物はこれなんだろうなと納得。
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日に焼けた大理石の上を直接裸足で歩くのは熱すぎるので、みんなむしろの上を巡礼する。僕もゆっくり何周かして写真を撮り歩いた。

15時、寺院南口に戻って商社マンと合流し、国境行きミニバンに乗り込む。まさかの定時発車!
運転手のほかに、印度人老夫婦一組、若者ふたり組が二組、それに日本人ふたりの計9人で座席はきっちり満員。

普通は30分ほどで到着するらしいが、途中タイヤの調子が悪くて、国境手前の駐車場に着いたのは16時前だった。
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車から降ろされ、荷物は持って行けないと言われて、カメラ、パスポート、財布、タオル、飲み物を手に持ち、あとは道端のロッカーと呼ばれる屋台のおっさんに預ける。
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駐車場を出て歩き始めると、ラホールまでたった23kmの表示、それってアムリツァル戻るより近いのか。うーん、近くて遠い国パキスタン。
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途中3か所ほどでボディチェックを受ける。一緒に歩いている印度人群衆は何となく興奮気味。顔に国旗をペインティングして愛国心たっぷり。
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やっと国境に辿り着き、No.3の入り口でパスポートを見せ、VIP席近くの外国人専用スタンドに入ると、16時半の時点で印度側一般席は超満員。パキスタン側のスタンドはガラガラ。

酷暑の中待つこと1時間半、やっと18時になって観客参加のプレイベントが始まる。観客の女性が順番に国旗を持って走ったり、みんなで踊ったり、もうすごい盛上り!
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18時半になって国境警備隊代表の美女ふたりによる行進でセレモニーのスタート。続いてメインイベントである、リーダーと5人の兵士によるパフォーマンス。
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国境を挟んで両軍威嚇のポーズ、ここが一番の大声援大音響!申し訳ないが、こっちは見てて大爆笑!
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19時、日没に合わせ両国国旗が仲良くゆっくり降ろされる。
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国旗が納められたのは19時過ぎ。例の定時発車ミニバンと駐車場に19時半という約束だったんで、帰路を急ぐ。

無事に駐車場に戻って、他の若者四人と落ち合えたが、老夫婦が戻らない。15分ほど待って運転手は別の男性客ふたり連れを代わりに拾って出発。あーあ、遭難しちゃった。30分弱でスタンドから駐車場に戻るのは老夫婦にはつらいよなぁ。

車の中ではまだ興奮冷めやらぬ若者連中から、パキスタンと印度ではどっちがかっこよかった?と迫られる。正直、線対称の同じ動きだったのだが、この場合印度としか答えられんやろ。
そうだよな~、やっぱ印度はすごいんだよ!と喜んでいる。いいなあ、素直な愛国心。

寺院近くで車を降りて、ライトアップされた境内に。夜もまたいい雰囲気。
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商社マンから信者に振舞われる食事ランガルに誘われる。僕はあまり人混みが好きではないのだが、怖いもの見たさで一緒に着いて行った。下で受取ったアルミの皿を持って、2階広間へ。
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ひえー、信者でぎっしりの間に腰を下ろすと、自動的にバケツで食事が盛られる。
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おいしゅうございました、ごちそうさま。
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皿洗いのボランティアを横目に退出。食事タダで頂いたんだから、ホントは手伝わなきゃね。

大理石の回廊は24時間開放で多くの信者はそのまま寺院に寝泊まりしている。食事もタダだし。これはヒンドゥーの階層に対抗して、広く開放され分け隔てないというシク教の思想を表しているらしい。

僕と商社マンは近くの宿に戻って就寝。ホントならビールで乾杯といきたいとこだけど、なんせ禁酒・禁煙・菜食の聖地なもんで。

翌朝夜明けと共にまたひとりで寺院を覗くと、すでに多くの信者が巡礼中。
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入場無料ということもあって、昼、夜、朝と3度もお参りさせてもらった黄金寺院。



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by phraganet | 2015-07-07 02:43 | インディア

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